おーたさんです。

6月22日のオンエア(再放送は6月28日)は、

まず、エリゼッチ・カルドーゾの歌う「Chega de saudade」から始まりました。

ジョアン・ジルベルト自身の演奏と歌がボサ・ノヴァ第一号と言われますが、
こちらのエリゼッチ・カルドーゾ版はそれに対してときどき第ゼロ号と呼ばれます。

この曲が収められた「余りある愛の歌(Canção do amor demais)」というアルバムは、




あるインディーズレーベルより1000枚ほどプレスされただけでした。
それが全部はけることなども期待すらされていなかったそうです。

それもそのはず、今でこそこのアルバムは、
トン・ジョビンとヴィニシウス・デ・モラエスの作品ばかりを
収録したアルバム、そして、

ジョアン・ジルベルトのバチーダが初めて記録された
レコードとして珍重されたりしていますが、

当時トン・ジョビンは
当時「黒いオルフェ」の音楽を担当したばかりで
まだそれほど名前を知られていませんでした。

もちろん、「イパネマの娘」や「ワン・ノート・サンバ」などを
作曲して世界的に有名になる以前の話です。

また、エリゼッチ・カルドーゾも、
当時すでに素晴らしい歌手として評価されていたにもかかわらず、
ヒットチャートを賑わせるような曲には恵まれない時期だったようです。

このインディーズレーベル、
「フェスタ」のオーナーの趣味による
いささか地味なアルバムとして、
(予算の都合もあったのでしょう)
制作されたといういきさつがあります。

この辺の経緯については、
こちらに詳しいです。


「ボサ・ノヴァの歴史」
(ルイ・カストロ著 國安真奈訳)

また歌い方についてあれこれ指示する
ジョアンに
エリゼッチは疲れ果て、
しまいには口出し無用、とジョアンに告げ、
馴染みの伴奏者を連れてこようとさえしたようですが、
それは叶わず、

ジョアンとエリゼッチは平行線のままで
レコーディングが終わります。

結局は、ジョアン自身の録音になる
「Chega de saudade」と「Bim bom」78回転盤シングルが発表された後に、
このレコードは1000枚が売り切れるのみならず、
コレクターズアイテムになったそうです。

てな話をしばらくしたわけですが、
ネタを考えているうちに、

"Abraços e beijinhos, e carinhos sem ter fim..."

という一節が妙に気になりまして、

抱擁も、接吻も、愛撫も、
今となっては濃厚接触などと言われて、
ともすれば避けましょう、と言われかねないことだけど、
これが結局いちばん大事なんじゃないか、と思い巡らしたわけです。(笑)

というわけで、続きます。